ねじ(ボルト)の種類・規格完全ガイド!

サイズ・頭部形状・CADザグリ寸法・強度区分別トルク管理まで徹底解説

機械設計や製造現場で最も頻繁に使われる基本パーツ「ネジ(ボルト・小ねじ)」。

しかし、いざ図面を描いたり現場で選定しようとすると、「呼び径やピッチの基準は?」「頭の形状はどう選ぶ?」「ザグリ深さは?」「強度区分(4.8や10.9など)に応じた適正トルクは?」と迷うポイントが非常に多くあります。

ネジの選定ミスやザグリ寸法の誤り、トルク管理の不備は、「組み立て時に部品が干渉する」「ネジ頭が突き出る」「締め付け過多で破断する」「緩んで脱落する」といった現場での重大なトラブルに直結します。

この記事では、ネジ選びやCAD設計、現場での締付作業に必要な知識を、実務でそのまま使える各種一覧表とともに網羅しました。図面描画や現場作業の保存版ガイドとしてご活用ください。

1. ネジの基本サイズとピッチ(呼び径・並目・細目)

ネジのサイズは「呼び径(M径)」と「ピッチ(P)」の組み合わせで表記されます(例: M6×1.0)。

  • 呼び径(M): ネジの外径(山の頂点から頂点までの直径)をミリメートルで表したもの。
  • ピッチ(P): ネジ山から隣のネジ山までの距離(mm)。

メートルねじ(並目・細目)ピッチ&下穴径・逃げ穴径 詳細一覧表

CADでネジ・穴加工を定義する際に必須となる、標準ピッチ、細目ピッチ、タップ下穴径(JIS 2級推奨)、ボルト通し穴(逃げ穴径)の一覧です(JIS B 0205 / JIS B 1001 準拠)。

呼び径(M)並目ピッチ P細目ピッチ P(代表例)タップ下穴径(目安)ボルト逃げ穴径 dh​(JIS 中級)ボルト逃げ穴径 dh​(JIS 粗級)
M30.5 mm—φ2.5φ 3.4φ 3.6
M40.7 mm—φ 3.3φ 4.5φ 4.8
M50.8 mm—φ 4.2φ 5.5φ 5.8
M61.0 mm—φ 5.0φ 6.6φ 7.0
M81.25 mm1.0 mmφ 6.8φ 9.0φ 10.0
M101.5 mm1.25 / 1.0 mmφ 8.5φ 11.0φ 12.0
M121.75 mm1.5 / 1.25 mmφ 10.2φ 13.5φ 14.5
M162.0 mm1.5 mmφ 14.0φ 17.5φ 18.5

【並目と細目の使い分け】

  • 並目(標準): 通常の固定用。流通量が多くコストも安い。
  • 細目(ほそめ): ピッチが標準より細かい。ねじ込み深さが浅い場所、緩み止め効果を高めたい場所、位置の微調整が必要な箇所に使用。

【CAD描画・モデリング時の注意点】

  • 3D CADモデリング時:ネジ山をリアルな螺旋形状(スウィープ等)で描画するとデータ量が肥大化します。特別な意匠確認や3Dプリンタ出力目的以外は、**「簡易表示(ねじ用テクスチャ/ねじ属性)」**でモデル化するのが原則です。
  • 2D図面展開時:外径(おねじ山頂/めねじ谷)は太い実線、内径(おねじ谷/めねじ山頂)は細い実線(円弧は3/4開口)で描くのがJIS製図の基本ルールです。

2. ネジの「頭部形状」の選定基準と特徴比較

工具スペース、締め付け力、出っ張り(意匠・安全)の観点から頭部形状を選定します。

頭部形状JIS標準規格締め付け工具強度・トルク伝達特徴・CAD設計時の注意点
六角穴付きボルト
(CAPボルト)
JIS B 1176六角棒レンチ極めて高い・ザグリ穴に入れて頭部を沈めるのが一般的。
・省スペース設計に適すが、レンチの差込方向(軸方向)の作業スペース確保が必須。
六角ボルトJIS B 1180スパナ / メガネ高・頭部側面にスパナを入れるため、**ボルト周囲の旋回スペース(工具クリアランス)**が必要。
・壁際や凹部への配置時は工具が入るか確認。
皿(サラ)小ねじJIS B 1111十字(プラス)中・表面を完全にフラット(突起ゼロ)にできる。
・皿ザグリの角度は90°。プレート板厚が小さすぎると皿モミが貫通してしまい固定不能になる。
鍋(ナベ)小ねじJIS B 1111十字(プラス)中・薄板や小部品の一般的な固定用。
・頭部が表面に出っ張るため、他部品との干渉チェック(クリアランス確認)が必要。
トラス小ねじJIS B 1111十字(プラス)中(面圧低減)・頭部径が大きく全高が低い。
・長穴加工部や薄板、カバー類の留め具で、穴抜けや潰れを防止したい箇所に使用。
ボタンボルトJIS B 1177六角棒レンチ中〜高・CAPボルトの強度を持ちつつ頭部出っ張りを抑える。
・外観デザイン性を高めたい箇所や、引っかかりを防止したい箇所に好適。

※締め付け工具は、頭部形状に対してよく見るものを記載しております

3. CAD図面描画時の必須知識:ザグリ寸法と穴深さの設定基準

3D CADの「穴ウィザード」等を使う際、あるいは2D図面で注記・寸法付与を行う際に欠かせない設計ルール数値です。

① 六角穴付きボルト(CAPボルト)用ザグリ寸法一覧

頭部をプレート内に没入させるためのザグリ(Counterbore)加工寸法です。一般的に、ネジ頭部径より+1mm程度大きく、頭部高さより+0.5〜1mm程度深く設定します。


呼び径(M)ボルト頭部径 Dk​ボルト頭部高 K推奨ザグリ径 Ds​標準ザグリ深さ Hs​スパナ/ソケット沈め用 ザグリ径(参考)
M35.5 mm3.0 mmφ 6.53.5 mm—
M47.0 mm4.0 mmφ 8.04.5 mm—
M58.5 mm5.0 mmφ 9.55.5 mm—
M610.0 mm6.0 mmφ 11.06.5 mmφ 18.0
M813.0 mm8.0 mmφ 14.58.5 mmφ 23.0
M1016.0 mm10.0 mmφ 17.510.5 mmφ 28.0
M1218.0 mm12.0 mmφ 20.012.5 mmφ 32.0

【補足】 塗装処理を施す部位の場合、塗膜の厚みで工具や頭部が入らなくなる恐れがあるため、ザグリ径 $D_s$ をさらに+0.5〜1.0mm程度広めに指定することがあります。

② 止まりタップ(めねじ)の「下穴深さ」と「有効ねじ深さ」の公式

貫通できない板やブロックにネジを切る(止まりタップ)場合、CAD図面上で「ねじ深さ(有効ねじ)」と「下穴ドリル深さ」の差(不完全ねじ部・先端逃げ)を正しく描く必要があります。

───────┐   ┌───────────────
       │   │
       │ █ │  ← 有効ねじ深さ L_t (例: 2D)
───────┤ █ ├───────────────
       │ ▒ │  ← 不完全ねじ+粉溜まり (0.5D〜1.0D)
───────┴───┴───────────────
        ▲118°(ドリル先端角) ← 下穴深さ L_d

設定公式(ガイドライン)

  1. 有効ねじ深さ (L_t):
    • 鋼・鋳鉄の場合:1.5D ~ 2.0D(例: M6なら 9~ 12mm)
    • アルミ・樹脂などの軟質材:2.0D~ 2.5D(例: M6なら 12~ 15mm)
  2. 下穴ドリル深さ ($L_d$):
    • L_d = L_t + (3 ~ 5) ピッチ P (または概算で L_t + 0.5D~ 1.0D)

【なぜ下穴を深く掘る必要があるのか?】

タップ加工時、食い付き部の不完全ねじ部が存在することに加え、切粉(粉塵)が底に溜まります。下穴深さに余裕がないと、タップが底突きして折損するか、ボルトを締め込んだ際にネジが途中で噛み込んで底突きを起こし、締結力が得られなくなります。

4. ネジ頭部の「刻印」と「強度区分」の意味

六角ボルトやキャップボルトの頭部を見ると、「8.8」「10.9」「12.9」や「A2-70」といった数字やアルファベットが刻印されています。これはネジの強度(材料・引っ張り強さ)を示す標識です。

鋼製ボルトの強度区分(例:10.9 の読み方)

数字の「ドット(.)」の前後に意味があります。

  • 「10.9」の場合
    • 前の数字(10): 引張強さの最小値 ➔ 10× 100 = 1000 N/mm2(1000MPaまで耐える)
    • 後ろの数字(9): 耐力(降伏点)の割合 ➔ 引張強さの90%(900Nmm2で永久変形が始まる)

ステンレス製ボルトの刻印(例:A2-70 の読み方)

  • A2 : 鋼種(A2=SUS304相当、A4=SUS316相当)
  • 70 : 強度区分(70=引張強さ 700Nmm2}相当)

5. 強度区分別の適正締め付けトルク管理&強度計算方法

ボルトの選定において、単にサイズ(M径)を決めるだけでなく、「そのボルトが何Nの力(荷重)まで耐えられるか」および「強度区分に応じてどのくらいのトルクで締め付けるべきか」を管理することは、締め付け過多による破断や締め付け不足による緩み事故を防ぐために不可欠です。

① 強度区分別・適正締め付けトルク詳細一覧表(並目)

ボルトを締め付ける際、ボルトの耐力(降伏点)の $60\% \sim 70\%$ の軸力(締付力 $F_{\mathrm{f}}$)が発生するように締め付けるのが適正(トルク係数法)とされています。

※以下はトルク係数 $K = 0.2$(標準的な乾いたボルト)、目標軸力=各強度区分の耐力(降伏点)の $70\%$ にて試算した標準参考値です。

呼び径(M)ピッチ P4.8 相当(一般小ねじ)8.8 相当(一般構造用)10.9 相当(高強度・キャップ)12.9 相当(超高強度)A2-70 相当(ステンレス/SUS304)
M30.5 mm0.6 N・m1.4 N・m1.8 N・m2.2 N・m1.0 N・m
M40.7 mm1.4 N・m3.1 N・m4.4 N・m5.3 N・m2.4 N・m
M50.8 mm2.8 N・m6.3 N・m8.9 N・m10.7 N・m4.9 N・m
M61.0 mm4.8 N・m10.8 N・m15.2 N・m18.2 N・m8.4 N・m
M81.25 mm11.7 N・m26.2 N・m36.9 N・m44.3 N・m20.5 N・m
M101.5 mm23.2 N・m52.0 N・m73.1 N・m87.7 N・m40.6 N・m
M121.75 mm40.5 N・m90.3 N・m127.0 N・m152.4 N・m70.8 N・m
M162.0 mm100.5 N・m224.2 N・m315.3 N・m378.3 N・m175.8 N・m

各強度区分・材質ごとの現場での注意点

  1. 4.8(低炭素鋼)
    • 一般的な十字穴付き小ねじや安価なボルト。トルクをかけすぎると頭部がねじ切れる(破断する)ため、電動ドライバーのクラッチ設定値に注意が必要です。
  2. 8.8(中炭素鋼・焼き入れ)
    • 自動車や一般産業機械の六角ボルトで広く使われる標準的な高力ボルト。
  3. 10.9 / 12.9(合金鋼・SCM435等)
    • 六角穴付きボルト(キャップボルト)や高張力ボルトに多く使用されます。大きな軸力を確保できますが、高硬度ゆえに水や酸性雰囲気に触れる場所では「遅れ破壊(水素脆化)」を起こすリスクがあるため、使用環境に配慮が必要です。
  4. A2-70(ステンレス・SUS304相当)
    • 鋼製ボルト(10.9等)に比べて強度は約60%程度と低めです。鋼製ボルトと同じ感覚でトルクをかけると軸伸びや破断を起こすため、必ずステンレス専用の締め付けトルクで管理します。
    • 焼き付き(かじり)防止: ステンレスは摩擦熱で「焼き付き」を起こしやすい材質です。トルク管理に加え、アンチサイズ剤(焼き付き防止剤)の塗布や手作業での丁寧な締め付けが必須です。

② 許容引張荷重(許容軸力)の簡易計算方法

ボルトに引っ張り方向の力 $F$ がかかる際、ボルトが永久変形(降伏)せずに安全に耐えられる最大の力(許容引張荷重 $P_{\mathrm{a}}$)を求める計算式です。

  • Pa : 許容引張荷重 N
  • A_s: ボルトの有効断面積 [mamm2](ネジ部の断面積)
  • σy : ボルト材料の降伏点または耐力 [N/mm2]
  • S : 安全率(一般設計では S = 3 ~ 5、衝撃荷重がかかる場合は S = 5 ~ 10)

主要サイズ(並目)の有効断面積 $A_s$ 一覧

呼び径M3M4M5M6M8M10M12M16
A_smm25.038.7814.220.136.658.084.3157.0

【計算例】M8(強度区分 10.9)ボルト 1本の許容引張荷重

  • 条件: M8(強度区分10.9)、静荷重(安全率 S=3)
  • 耐力 σy: 1000 Nmm2 × 0.9 = 900 Nmm2
  • 有効断面積 A_s: M8 ➔ 36.6 mm2

M8(強度区分10.9)ボルト1本で、安全率3を考慮しても約1.1トンの引っ張り荷重に耐えられる計算になります。

6. 設計者が確認すべき主要JIS規格一覧

図面注記や部品手配時に参照する主なJIS規格です。

  • JIS B 0205: メートル並目ねじ(基本寸法)
  • JIS B 1001: ボルト用通し穴径及びザグリ寸法
  • JIS B 1180: 六角ボルト
  • JIS B 1176: 六角穴付きボルト(キャップボルト)
  • JIS B 1111: 十字穴付き小ねじ(ナベ・サラ・トラス等)
  • JIS B 1051: 炭素鋼及び合金鋼製締結用の機械的性質(強度区分の規格)
  • JIS B 1052: ステンレス鋼製締結用の機械的性質
  • JIS B 1083: ねじの締付け手法通則

7. まとめ:適切なネジ選定と寸法設計・トルク管理で高品質なモノづくりを

ネジ選定および設計の基本手順は以下の通りです。

  1. 荷重と強度計算から「サイズ(M径)」と「強度区分(4.8 / 8.8 / 10.9等)」を決める。
  2. 使用場所のスペースと工具旋回域から「頭部形状(六角かキャップか皿か)」を決める。
  3. CADモデル・図面作成時に「正しいザグリ径・深さ」と「十分なタップ下穴深さ」を設定する。
  4. 現場の締付作業時に「材質・強度区分に応じた適正トルク」でトルクレンチ管理を行う。

規格と基準数値を正しく理解し、品質と安全性、コストのバランスが取れた最適設計を