【再構成版】板金曲げの「曲げR(内R)」標準規格と決定ルール|材質・板厚別早見表から割れ防止ポカヨケまで

精密板金加工(プレスブレーキ加工)の図面を描く際、設計者を悩ませるのが「曲げ部(内側)のR(曲げ内半径)はいくらで指示するのが正解なのか?」という疑問です。

「図面に曲げRの指示を書かないと、現場でどう処理される?」

「アルミやステンレスを曲げたとき、内Rが小さすぎると割れる理由は?」

「展開計算(Kファクター)をするとき、基準となる内Rの決定ルールを知りたい」

本記事では、設計者や加工担当者が一瞬で判断できるように「板厚・材質別の標準曲げ内R早見表」をはじめ、Rが決まる物理的メカニズム、限界最小R、そして図面でのポカヨケ(ミス防止)指示まで網羅して解説します。

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1. 【一発回答】板厚(t)・材質別 標準曲げ内R(R)早見表

まずは結論です。一般的なベンダー加工(Vブロック曲げ)において、加工メーカーが保有する標準金型(標準パンチR0.8〜R1.0等)を用いて安全かつ高精度に曲げられる標準曲げ内R(内径R)の目安一覧です。

目的別・推奨内R($R$)選定一覧

板厚(t)鉄鋼(SPCC / SPHC / SECC)ステンレス(SUS304 / SUS430)アルミ(A5052)推奨する図面指示(内R)備考・注意点
0.8 mmR 0.8(1.0t)R 0.8(1.0t)R 1.0(1.25t)R0.8 〜 R1.0標準パンチ(R0.8)で最もきれいに曲がる
1.0 mmR 1.0(1.0t)R 1.0(1.0t)R 1.0(1.0t)R1.0汎用板金の超定番。迷ったらR1.0
1.2 mmR 1.2(1.0t)R 1.2(1.0t)R 1.5(1.25t)R1.0 〜 R1.2標準パンチ(R0.8〜1.0)使用可
1.6 mmR 1.6(1.0t)R 1.6(1.0t)R 2.0(1.25t)R1.5 〜 R2.0板厚同等(R=t)確保が安全
2.0 mmR 2.0(1.0t)R 2.0(1.0t)R 2.5(1.25t)R2.0アルミは鋭角すぎると外側にクラック発生
3.2 mmR 3.2(1.0t)R 3.5(1.1t)R 4.0(1.25t)R3.0 〜 R3.5中厚板。金型のショルダーRの影響も受ける
4.5 mmR 4.5(1.0t)R 5.0(1.1t)R 6.0(1.3t)R4.5 〜 R5.0厚板。V幅が広くなるため内Rも自然と大きくなる

【設計の鉄則ルール】

特別な理由がない限り、曲げ内Rは「板厚と同等(R = t)」に設定するのが、金型手配・展開計算・破断防止の面で最も安全かつ低コストです。

2. そもそも「曲げR」はどうやって決まるのか?

図面上に「曲げR」を明記しない場合、あるいは指定した場合に現場でどのような現象が起きているのか、物理的・工具的メカニズムを解説します。

① 上金型(パンチ先端R)による決定

エアベンディング(空圧曲げ)加工では、上金型(パンチ)の先端半径(パンチR)がそのまま板材の内側に押し付けられます。

一般的な汎用金型では 「パンチ先端R = 0.8mm または 1.0mm」 が標準装備されているため、薄板(t=0.8 ~ 1.6mm)を曲げた場合、成りゆきで内Rは約 R0.8 ~ R1.2 前後に仕上がります。

② 下金型(V幅)による自然R(成りゆきR)

厚板(t=3.2mm 以上)になると、広いV幅(V16やV22など)の下金型を使用するため、パンチ先端RがR1.0であっても、板材がV溝に落ち込む際の塑性変形で自然と内Rが大きく膨らみます(成りゆきR)。

厚板で無理に「内R 1.0mm」などの小さなRを指定すると、専用の鋭角金型が必要になったり、加圧力が激増して金型が破損する危険があります。

3. なぜ小さいRで曲げると「割れ(クラック)」が発生するのか?

「筐体をコンパクトにしたいから」「角をピンピンに立たせたいから」という理由で、板厚に対して極端に小さな内R(例:t=2.0mm に対して R0.2など)を指定すると、曲げ部の外側に亀裂(クラック)や破断が発生します。

割れが発生するメカニズム

曲げ加工が行われる際、曲げ線の部分では以下の応力が発生します。

  • 曲げの内側:強烈に押し潰される(圧縮応力)
  • 曲げの外側:強烈に引き伸ばされる(引っ張り応力)

内Rを小さくすればするほど、曲げ外側の板表面にかかる引っ張り伸び率(伸び歪み)が材料の限界伸び率(限界歪み)を超えてしまい、金属組織が引きちぎられてクラックが発生します。

材質ごとの最小限界曲げRの注意点

  1. アルミ(A5052等):鉄に比べて伸び率が低く、圧延方向(圧延ローリングの目)に対して平行に曲げると非常に割れやすい。アルミの曲げ内Rは「R ≧ 1.2t ~ 1.5t」と大きめに取るのが鉄則。
  2. ステンレス(SUS304等):加工硬化が著しく、引張強度が強いため、無理な小R曲げを行うと外側に深いヘアクラックが入る。
  3. 高張力鋼板(ハイテン材):バネ性が強く硬いため、限界内Rは非常に大きく(R ≧ 2.0t 以上)設定する必要がある。

4. 図面指示における「設計のポカヨケ(ミス防止)」

現場で加工トラブルや無駄な手戻りを発生させないための、図面指示テクニックを3つ紹介します。

ポカヨケ①:図面注記に「指示なき曲げRは R=t とする」と記載する

図面上のすべての曲げ箇所に「R1.0」「R1.6」と細かく書き込むと、図面が非常に見づらくなります。

プロの図面では、表題欄横の注記(注記欄)に「※指示なき曲げ内Rは板厚 $t$ と同等(または R1.0)とする」と一言記載しておくのが最も親切でミスがありません。

ポカヨケ②:外寸指定と内寸指定、どちらで管理するか明確にする

曲げ部品の寸法管理において、外側寸法で管理したいのか、内側寸法で管理したいのかを図面上で明確にします。

展開計算(伸び量計算)を行うCADオペレーターは、指定された「内R」の値を基準にKファクター(伸び係数)を当てはめて平展開図を作成するため、内Rの指定が曖昧だと完成寸法にコンマ数ミリのズレが生じます。

ポカヨケ③:相手部品との干渉チェック(逃げノッチと外R)

曲げ部品の内側に別の角型パーツをセットする場合、「内R」と相手部品の「角」が干渉して奥まで入りきらないトラブルが頻発します。

  • 外R(外半径)の計算式:外R ≈ 内R + t(板厚)
  • 干渉対策:はめ込む相手パーツの角部にC面取りを施すか、板金側に「曲げ逃げスリット(逃げノッチ)」を設ける設計を行います。

5. まとめ

  1. 基本ルール:曲げ内Rは「板厚と同等(R ≈ t)」に設定するのが加工・コスト面で最善。
  2. 標準の目安:薄板(t=0.8~ 1.6mm)は R1.0 前後、アルミは割れ防止のため R1.2t〜1.5t と大きめに設定する。
  3. 図面指示の鉄則:注記欄に「指示なき曲げ内Rは R=t とする」と明記して、CADオペレーターや現場との認識ズレをゼロにする。

適切な曲げRを設定して図面を引くことで、曲げ部の割れ不良を防ぎ、精度の高い展開計算とスムーズな板金加工を実現できます。