熱間圧延鋼板 SPHCの家系図 兄弟に末尾・D・E・F
ミガキ・ボンデ・サンセン・酸洗材・クロカワ・黒皮材・電気材・ドブ付け材・HOT材・メッキ鋼板…どれも私の経験で呼び名として使われた名称です。
これでは加工従事者は理解できるのでしょうが、一般の方たちにはチョット…いや、かなり…ですよね。同じSPHCから派生した材料や、SPHCそのものを表しているのですが困ったものです。この記事では、「家系図」のような形式で、SPHCとその派生製品の事を簡単まとめてみようと思います。
呼び名を正確に理解しよう。
SPHCの材料としての呼び名は、その工場によって違う場合もあります。さらに、場合によっては、「SPHCと言ったらうちは酸洗材だよ。」と勝手なルールがある場合もあります。そんな世界に突然首を突っ込んでも理解できるわけはありません。
呼び名の分類。
製造メーカー・材料問屋・加工工場などで聞いたことのある呼び名と、簡単な材料の説明をまとめてみます。
SPHC
黒皮材・クロカワ・HOT・ホット材
熱間圧延にて製造された材料で熱間圧延の「熱」の部分をとってホット材(HOT)などと呼ばれる場合もあります。酸化被膜が表面を覆っているため、この状態では少し錆びにくいです。触ると酸化被膜がはがれ手が黒くなるため「黒皮」などと呼ばれたりします。
SPHC-P
サンセン・酸洗材
SPHCの酸化被膜を除去した材料です。表面を覆っている酸化被膜を酸で洗い流す行為から付けられた名前です。酸洗材は、材料として錆びに対して何の抵抗もないため、油を塗布した状態での出荷が主流ですが、酸化被膜に比べると抵抗は低いです。
SEHC
メッキ鋼板・電気材・電気メッキ・電気材・電気亜鉛メッキ鋼板・ボンデ鋼板・ジンク材
SPHC-Pに電気亜鉛メッキを施した材料になります。電気メッキを行うことから「メッキ」・「電気」の文字を取って表現されることが多いようです。電着させるためメッキ厚は薄めで見た目もきれいな材料になります。比較材料では、SECCがありますが、板厚を優先した選択で問題ないでしょう。SECCは、SEHCより板厚の薄いものが存在します。(t=1.2㎜以下)
SGHC
ドブ付け・亜鉛メッキ・ボンデ鋼板・ジンク材
SPHC-Pに溶融亜鉛メッキを施した材料です。溶かした亜鉛の層の中にメッキする製品を漬け込んで行うメッキです。電気メッキに比べるとメッキ厚は厚く、主に屋外で利用する製品に向いています。
正確に言うと呼び名として間違っているものもあります。例えば、「ボンデ鋼板」は新日本製鉄が製造したものが呼ばれた商品名だったんです。他にも「○○ジンク」と製鉄メーカは商品名として販売を始めたのですが、「ボンデ・ジンク」が一人歩きして今に至っています。
皆さんが、「プチプチ」と呼んでいる緩衝材。「プチプチ」は川上産業株式会社様の商品名。正式製品名は「気泡緩衝材」こんな感じです。「エアパッキン」「エアークッション」「エアーキャップ」各社このような商品名で販売を行っているのですが、商品を表現する時、「プチプチ」が一番わかりやすいですね。これに近いです。
SPHCの家系図。
熱間圧延鋼板 ― SPHC ― SPHC-P ― SEHC
∟ SGHC
∟ SPHD ※1
∟ SPHE ※2
∟ SPHF ※3
- 本家(熱間圧延鋼板)
- 長男(SPHC)
- 息子(SPHC-P)
- 孫 (SEHC・SGHC)
※1長女(SPHD)絞り用
※2次男(SPHE)深絞り用
※3次女(SPHF)深絞り用
このような感じでしょうか。
指定材質が勝手に変更される事例がある。
最初にお話ししましたが、工場によっては「うちはSEHCしか扱ってないから、SPHCって図面にあってもSEHCだよ。」残念なお話ですが実際にあります。相談があっての製造であればよいのですが…
確かに機械的性質(素材の強さ)には問題ないのですが、材料としてのコストは約1.5倍です。材料に対して要望がある場合しっかり伝えましょう。曖昧にしないこと。不安なら加工工場へ相談するのが一番です。
まとめ。
材料1つ呼び名も色々とあり面倒な業界です。ですが、呼び名にも理由があるので、そこをつかめれば、覚えるのも連想するのも簡単な事なのです。
加工工場で「見積りする」・「材料調達する」このような人たちは、今回のお話し十分理解していると思います。ですが、その工場でワーカーとして働いている人は、もしかすると知らないことなのかもしれません。
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