【金属材料初歩】山形鋼の等辺・不当辺のどう使う

山形鋼と言うと何お思いつきますか?ビルの鉄骨や工事現場、身近で見るのは電車のレールでしょうか。等辺/不等辺山形鋼…「なんじゃそりゃ?」先ずは初歩の初歩で山形鋼の形状と特徴・利用されている場所などを覚えましょう。

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等辺/不等辺山形鋼の初歩。

相変わらずなんですがこの業界、呼び名がいくつもあるので本当に面倒くさいです。

  • 山形鋼 
  • 等辺/不当辺山形鋼 
  • アングル 
  • Lアングル
アングル形状

形状は見ていただいた通りの形状です。

  • 等辺山形鋼 2つの辺の長さが同じ
  • 不当辺山形鋼 2つの辺の長さが違う

断面が「L字に見える」・「山の形に見える」などから色々な呼ばれ方をするのでしょう。
2種類あるのはどちらもよく使われるからです。

※今後このサイトでは、アングルと表記します。

アングルは、形鋼(かたこう)と呼ばれる鋼材の一つで、ビルを建てる時に利用される鋼材などと同じグループに入る材料です。板金加工・切削加工で利用される材料に比べ、定尺(販売単位)で見ていくと「長い」ものが多いです。(4m・6mなど)構造体に利用されるものが多く、身近な話だと、家の門であったり、非常階段の一部(むき出しのマンションなんかの)電柱に付いている変圧器の固定部品として…など中々身近にあるけど目に付きにくい場所での利用が多いです。

材質の種類。

アングルの代表的な材質は「SS400(一般構造用圧延鋼材)」ですが、アルミやステンレスなどもあります。ここで注意が必要です。アルミやステンレスは、表面が綺麗ですが、SS400は、黒皮ですのでザラザラしています。それも一定ではなく個体差があるんですね。利用時、面で抑えるような設計部品となると、正に「一皮むく」作業(フライス加工)が必要になる場合があります。

特徴。

アルミやステンレスのアングルは、割と目に付く製品に使われる場合が多いようです。家のサッシやエレベーターの装飾、建築構造物の装飾、店舗の装飾などにも利用されることがあります。変わってSS400のアングルは、溶接性の良さや強度・引張の強さなどからやはり構造体への利用が理想でしょう。色々な線品の架台(例えば太陽光パネル)・船・橋・建築物…です。

サイズは?

アングルのサイズはJISで決められています。事前に自分の欲しいサイズがあるかどうか確認しておくことは必要かもしれません。仮に希望サイズがなくてもカットは可能ですが、当然コストがかかります。

JIS G 3192で調べるとサイズは確認できると思います。

どこで加工する。

アングルの加工は、色々な意味で少し面倒なんです。

  • 設備の問題
  • サイズの問題
  • 溶接での歪(ゆがみ)問題

設備の問題。

加工をするという事だけで言えば、板金工場でも切削工場でも可能だと思うのですが、時間がかかる可能性があります。アングルを加工するなら、それなりの設備があるところでないと時間ばかりかかる加工になる可能性があります。(製造は時間=コストです。)どんな工場でも構わないのですが、アイアンワーカーなどがあると加工は早くなります。更に要望で、面の加工(黒皮を剝がす)となるとフライスなどの加工機が必要です。問題なのは、アイアンワーカーは、どちらかと言うと鉄工所に近い「構造体を主にする工場」の設備です。鉄工所に切削加工のフライスは…昔は結構あったんですが最近は数が減ってきている現状があって加工できるところが減り始めているのも事実です。

サイズの問題。

少量なら「材料屋さんに切ってもらっての納品」もありなのですが、数が多くなったり、構造体を作るために工場で切りだしたい場合は定尺の購入になる可能性があります。定尺は4m・6mになるので狭い工場だと取り回しがきかず対応不可…なんてことになるかもしれないですね。そしてサイズの問題点がもう一つ。希望のサイズのアングルがなかった場合切る・削るしかないということです。アングルは安いのに加工でコストが…なんて!ことの無いようにしましょう。

溶接の問題。

SS400は、材料としての溶接性は良い材質です。ですが、アングルのように長い物になると少し話が変わってきます。例えば1mの立方体をアングルで作ろうとすると、角は8箇所です。その角には3本の柱が集まります。その3本を一気に溶接しようとすると「熱が集中して」全体がひずむのです。場合によっては公差に入らないことも出てきます。構造体のアングルを利用する時は、可能な限り大きめに公差を取ることオススメします。

板金工場に依頼。

これはトリッキーな手段ですが、アングルの加工設備のない板金工場への依頼の場合、板金をL字に曲げて作ってもらう方法もあります。

メリット。

  • 得意な加工の依頼を工場へできる。
  • アングルのサイズ規格にとらわれない。
  • コストが安くなる可能性がある。

デメリット。

  • 板金での強度計算が必要(重量物に限る)。

まとめ。

アングルは問題点を理解して利用すれば、非常に便利な材料です。これは設計の段階から理解して取り込めると良いモノができるでしょう。最後にお話しした板金でのすり替えですが、最初から取り込んでしまい、板金で作るつもりの設計もありかもしれないです。長い付き合いの工場があれば別なのですが、中々「アングルの加工は得意ですか?」なんて聞けないですもんね。