板金加工【塗装基礎】粉体塗装と溶剤塗装の使い分け。色選べてますか?
こんにちはクロです。
塗料にillustratorの色がない。溶剤と粉体の違いは?これからモノづくりに係っていこうとする人によく聞かれます。今日は、金属加工・塗装の初級です。
塗装の種類
板金加工で塗装するには、大きく分けて粉体塗装と溶剤塗装があります。
大きく分かれたところから更に、エポキシ・アクリル・メラミン…どんどん分かれていくのですが、粉体塗装と溶剤塗装の特性をしっかり覚えていきましょう。
塗装する目的から考えてみる
意匠的な目的・対候性目的この2点が大まかな目的なんですよね。
塗装を勉強されている方は、「答え出ているのでは?」と思われるかもしれませんね。
意匠的な目的なら溶剤塗装・対候性を求めるなら粉体塗装。
理由を特徴から考えてみましょう。
特徴を掴もう
比較は後にして、先ず互いの特徴を挙げて行ってみます。
溶剤塗装の特徴
溶剤塗装は膜厚も薄く対候性も決して高くはありません。一番のメリットは、豊富な色の数でしょう。また、少量での生産を得意とするため、少量使用の場合はコストパフォーマンスが良いと考えられます。色数に関しては絵の具のように色を混ぜることが可能で無限に近いといってもよいでしょう。塗料にパール等を入れることによりキラキラした塗料などの製造も可能です。塗料の製造依頼は、㎏単位で可能です。
粉体塗装の特徴
溶剤塗装に比べると膜厚は3倍~4倍あります。屋外で利用される設備のような製品にも利用されることが多く、色数は溶剤に比べ少ないです。ごく最近まで特殊な色を作ろうとすると、100㎏単位での発注となり無駄が多いともいわれていました。最近では1㎏単位での発注も可能にはなりましたが、溶剤の単価には程遠い状況です。
※膜厚を150μ程度まで挙げることも可能です。
溶剤塗装 | 粉体塗装 | |
膜厚 | 5~20μ | 30~40μ |
最小ロット | 1㎏単位 | 300㎏単位 |
特殊色 | 調合可能 | 可能ではあるが難しい |
焼付温度 | 110~140° | 180~200° |
対候性 | 屋外は向かない | 屋外でも可能 |
- 膜厚-溶剤は膜厚を上げると美観が失われる可能性がある。
- 粉体塗装は依頼内容により150μぐらいまでは膜厚を確保することが可能。
- 美観も膜厚も欲しい場合、禁じ手ではあるが粉体塗装後、溶剤塗装を行うとコストが抑えられる場合がある。
表の内容は塗装というよりも塗料のスペック(仕様)となりますので、同じ溶剤塗料でもメーカーによって違いは出てきます。
塗料とインク
冒頭で書きましたが、意匠(色調)にこだわりがあって「illustratorの色がない。出来上がりの色が違う。」などのトラブルが発生しないために。有料でも同じ素材(板金)同じ塗料でサンプルを作っていただけないように相談するのも一つの手かもしれません。
塗料とインクについて
塗料とインクの違い分かりますか?明確な答えはないようなのですが、私的には、素材に吸収され色を出すのがインク。素材の表面で乾燥し膜を作り色を出すのが塗料と思っています。インクと塗料は色の表現方法が違います。その為、インクと塗料で同じ色を表現するのは難しくなっています。難しいというのは、近似値という表現で近い色を表現するからです。お時間あれば調べてみてください。DIC・マンセル・日塗工・PANTONE
トリッキーな使い方
私の経験で「手持ちの製品に塗りなおしたい」と相談を受けた時に注意すべき点がって、現在の塗装が何かというのが重要になります。
溶剤塗装の上 ⇒ 溶剤塗装は塗装が可能
粉体塗装の上 ⇒ 溶剤塗装は塗装が可能
溶剤塗装の上 ⇒ 粉体塗装は塗装ができない
先ほどの焼き付け温度より溶剤塗装が110~140°粉体塗装が180°~
焼き付けを行った際に、下地の溶剤塗装が沸いてしまって表面を形成するはずの粉体塗装も沸いてしまうことがあります。(沸く=空気が発生してブツブツになる)
まとめ
基本的には、屋外の製品なら迷わず粉体塗装、塗装もデザインの一部と考える屋内製品には溶剤塗装。などが特徴で選定理由になるわけです。
私の経験で申し訳ないのですが、曲げたり・溶接したりに関しては割と前向きに打ち合わせが可能なのですが、塗装となると…
事前に要求を上げておくことも必要ですね。色番号・膜厚要求・対候性…などです。
最後に溶剤・粉体ともに各塗料メーカが挑戦を続け良い製品を世に出そうとしています。溶剤塗料ではあるが、対候性の高い塗料・粉体塗料ではあるが、少量ロットの製品などです。当然要求が上がるとコストも上がりますが、「塗装は塗料を選ぶ」ここが大事だと思います。
補足:SECCは、皮膜は薄いですがメッキ付きの材質で塗装性も非常に良いです。対候性を求め意匠も気にされる場合は検討材料の一つにいかがでしょうか?