【板金加工】SPHCどんな加工ができる?切って曲げて溶接する。その先は?
SPHC…
よく聞かれるんですよね!選定理由😅
他の材質と比べると…
今日は、SPHCについて私の経験も含めて考えてみます
SPHCどんな性質?難しい?
SPHCは、炭素量が0.12%以下で、引張強度は270Mpa以上、比重は7.85で考えられることが多いようです。などこのような事はどこで調べていただいても簡単に検索できるでしょう。実際に聞かれるのは、このような数値のことより「何に使えるか?」「どう使うか?」こちらの方が多い気がします。鋼材の規格としては少しフワッとしていて、標準的な鋼材ですが、機械的強度面での条件が緩いです。その為、利用される場面や場所は限られる場合もあります。
SPHC選定の特徴としては(よく聞かれる質問)
- 利用目的とマッチしているか(何に使うか)
- 安定して価格が安い
- 板厚のラインナップが多く流通性の良い板厚がある
- 多種の加工に対応している
利用目的
単純に何に使うかです。カバーや製品を乗せる台・電子基盤を配置するための足・精密機器の何部部品を組付ける骨、色々考えられますが、何百キロも耐えるであったり、常に振動しているような部分には向いていません。理由は前述した少しフワッとした規格のためです。
比較対象としてSS400という鋼材がありますが、SPHCより炭素量が多く硬いです。更に最低の引張強度が400MPa以上と「270MPa以上」約1.5倍の強度保証をしている鋼材です。
更に正式名称からしても分かります。SPHCは、熱間圧延軟鋼板と呼ばれ、熱をかけ延ばした板を表しています。SS400は、一般構造用圧延鋼材、作り方はすべて読み取れないのですが、構造を作るための鋼材。鋼材ですから建築現場で見えるむき出しの鉄骨から、SPHCのような板まで様々な形状があります。
SPHCの利用の際は、利用目的・利用場所を一度想定して選定すると良いでしょう。
価格も問題
SPHCは鋼材の中でも安いです。正式な価格は流動性があるため表現が難しい所ですが、例えばSPHCを1と考えた場合。
材質 | |
SPHC | 1.0倍 |
SS400 | 1.2倍 |
SPCC | 1.3倍 |
SGHC | 1.5倍 |
※材料の手配も工場によって得意・不得意もありますので必ずではありません。一般論です。
板厚
今回は、6.0㎜以下の板厚で確認していきます。(薄板板金を対象とします。)
私の経験で申し訳ないのですが、6.0㎜以上になると強度の問題が出てきてSS400を選ばれる場合が多くなる傾向にあります。逆を言うと6.0㎜以上は規格は存在するが、SS400の方が流通もよく使い勝手が良いように感じています。
SPHCの板厚は規格として
1.2/1.4/1.6/1.8/2.0/2.3/2.5/2.6/2.8/2.9/3.2/3.6/4.0/4.5/5.0/5.6/6.0
SPHC全般では流通性は良いといえるでしょう。しかし、全部の板厚が流通が良いといえるわけではありません。1.6㎜・2.3㎜・3.2㎜ この3種類が性能の特長も生かした場面で一番流通性もよいしSPHCを利用するうえで性能もよいと思われます。
多種の加工に対応
SPHCは、とても加工のしやすい金属です。切る(レーザー加工・シャーリング)抜く(タレパン加工)成形(プレス加工)曲げ・角度曲げ(ベンド加工)R曲げ(三本ローラー)溶接(スポット溶接・Co2・Tigほか)表面処理(塗装・メッキ)などなど一般的な加工のほとんどが可能です。その為、SPHCで試作、精度が出ないので本番はSPCCのような使われ方もあるようです。
まとめ
SPHCは、価格も安く何度も言いますが加工のしやすい鋼板です。注意しなければならないのは、強度に不安があるということです。日本のモノづくりはJIS(日本産業規格)のルールに頼ることにより成り立っている部分もあります。その中でSPHCの位置づけは少し微妙ではあります。例えばエレベーターの内張りの板金には使えるのですが、構造体には使えない。自動車の扉やカバーには使えるのですが、フレームには使えない。通常の商品開発では、中々考えにくい所ではあります。あなたがもし、そのような強度を重視せねばならない商品をお考えの場合は迷わず別の素材をお考えさい。
SPHCの選定理由の一つとして大きいのは、多種の加工ができる。ここが大きなメリットでもあります。