タレパン加工で、「得意な製品」を理解する。

「タレパンてどうなんですか?」・「タレパンだとどうなります?」と工場に聞くと、一生懸命加工方法を教えてくれたりするのですが、知りたいのはそこじゃないんですよね。「なにが得意で・なにが苦手」なの。そりゃ加工を知っていた方がいいのかもしれないですが、ポイントがズレているようで…タレパン加工の簡単な説明と「得意」を理解しましょう。

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タレパン加工の簡単な説明。

ごくごく簡単に説明すると、「タレパン」は、略語でタレットパンチプレスが正式な名前です。加工機の名前は割と意味が単純で、タレット・パンチ・プレスこの3つで構成された加工機となります。

  • タレット=中華料理のターンテーブルのようなもの。
  • パンチ=紙に穴をあける文具のパンチのようなもの。(形状は違います。)
  • プレス=自動でパンチを押す為の機構。

タレットには多数の穴が開いていて、色々な抜き形状のパンチ(金型)がセットできます。それを、コンピュータ制御のプログラムを利用して色々な形状を抜いていきます。
※タレパンでは切ることを「抜く」と、表現することもあります。因みにタレパンは、プレス機扱いです。

タレパンの説明

補足:タレパンには、30~60本の金型がセットできます。丸や四角などの他にも異形と言われる六角やD型、要望があれば星形なんかの金型を作ることも可能です。そして、「切る・抜く」の他にもサイズのルールはありますが、成形加工も行えます。加工機の制御は、CAMデータの作成で対応していきます。
成形加工:バーリング・タップ・ルーバー・ランス…

メリット・デメリット。

ポイントをメリット・デメリットと考える場合、どうしても比較対象が考えられてしまいます。今回の場合は、「レーザー加工機」となるのでしょう。レーザー加工との比較もしながら確認していきます。

メリット。

項目タレパン加工レーザーの比較
1パンチの精度が高い。金型1発で抜く形状は、プレスと同じなので精度は非常に高いです。(丸・四角・異形)。レーザーの場合、加工の度に、レーザー加工機の精度分ズレる可能性があります。
全体的な加工費(コスト)が安い。タレパンの加工費は、1パンチ=〇円となるのでコストは非常に安いです。レーザーはアイドリングも必要だし高額になりがちです。
量産加工でメリットが増幅。タレパン加工は、長い間、24時間駆動を視野に進化してきた加工機なので量産を得意としています。温度湿度により加工が左右される可能性があるので、ある程度人が必要です。
成形加工が可能。「抜き」加工と同時に成形加工(100㎜程度まで)が行えます。通常で考えると別なプレス機を用意して、成形加工を行わなければならないところ、同時に加工できるのは人件費も含んでの目りっおといえるでしょう。※別途金型が必要な場合があります。成形加工は行えないので、別に工程を設けなければなりません。
円が抜ける。金型と同じ形状(円)が抜けます。レーザ加工では「ピアス」が必要なため正円を抜くことが難しいです。加工後、リーマーを通す。

デメリット。

項目タレパン加工レーザーの比較
CAMデータ作製に知識が必要。ブロックのように製品の外周・中抜き・成形をタレットに入った30~60本の金型で効率よく抜く方法を考える必要があるため、作業者に経験と知識が必要。失敗・間違えると加工機がクラッシュすることもある。上手に始動すれば入社当日からでも戦力として見れる。
板厚に制限がある。板厚は、3.0㎜以下しか加工ができない加工機が多い。レーザーの種類にもよるが、30㎜とかも切れてしまう。
多数の金型が必要。加工の幅を広げるためには設備投資が必要。更に金型は、一定の使用量で取り替える消耗品。消耗品はあるが金型は不要。
加工機以外に金型のメンテナンスも必要。加工機のメンテナンスの他に、金型のメンテナンスも必要。金型がないので不要。
異形の加工が苦手。ニブリング加工と小さな円で異形(特殊な形)を抜くことも可能ですが、得意ではない。得意な加工。
加工音がうるさい。先述べたように、タレパンはプレスですので、稼働音がうるさい。比較的静か。

タレパンの得意な加工を考える。

タレパンは、CAMデータ作製の段階では、レーザー加工の方がコストは安くなるでしょう。知識や経験が必要だからです。1個・2個の製品を…と考えた場合、CAMデータを作る段階では、レーザー加工に軍配が上がります。
ですが、いざ加工になった時のコストが、タレパンとレーザーで「同じ材質・板厚の同じ長さを切る」となるとレーザーのコストは16倍も高かったです。
16倍を頭に入れて加工を考えると、数量があればCAMデータで高くなったコストの分が吸収され簡単にタレパンとレーザーのコストは逆転します。そこに追い打ちをかけるように成形加工などがあったらコストの面だけで言うとタレパンの完全勝利となってしまいます。ではなぜ、レーザーの利用が多くなるのでしょう、そこは割と簡単で、レーザーの方が「小回りが利く」からです。先に述べたように、タレパンは長時間稼働を視野に進化してきた部分があります。その為、一度動き出すと数時間「止まらない・止めれない」稼働が多いです。横入りのしにくい加工機であることが問題なんです。

まとめ。

タレパンで加工を希望するなら、「数量・成形加工」これが道しるべになるかもしれません。加工に要望を出すことは、その裏に「必ずコスト」が絡んでくるでしょう。「レーザー加工だから出来ない。」というものはなくて、レーザー加工だと高くなる、だから「タレパン」で行こう。となるのだと思います。結末はいつも同じになってしまいますが、「相談できるところがあれば相談する。」これが正解なんでしょう。