タレパン加工の成形加工 1:バーリング・バーリングタップ

タレパン加工の最大のメリット2つ、「1つはコスト」もう一つは「成形加工」。理解はしているかもしれませんが、「成形加工ってどんな形状があるの?」・「どのくらいコストが安くなるの?」「図面の描き方は?」。なにか「今一つ理解できていない」、そんなあなたのために今回は、よく利用される成形加工・バーリング・バーリングタップのご案内をしていきます。

バーリング・バーリングタップを理解。

先ずは簡単に、バーリング・バーリングタップを理解しましょう。

  • これ以降、バーリングは「BR」バーリングタップは「BR-TAP」とさせていただきます。

BR。

BRは、板厚の薄い板金に成形加工を行うことにより、板厚(肉厚)を厚くしネジの固定ができるようにする加工の事を言います。タッピングネジを締結(締める)為に利用され、インパクトドライバーなどの電動工具にて締め付けることが可能です。利用方法での注意としては、メンテナンスなどに利用される、「開け閉めのある機構」には不向きで、一度締結したら開ける可能性の低い箇所への利用が好ましいです。

BR-TAP。

BR-TAPは、BRに「メートルネジ」などのネジ加工(タップ加工)を行ったものになります。大きな特徴としては、BRの加工とは違い、ハンドドライバーでも取り外しが可能になります。ネジなめなどの不具合が発生しなければ、何度でも開ける締めるが可能になります。

コストについて。

タレパンを使った加工とそうでない時の加工を比べてみます。

タレパンの加工。

タレパンでの加工であれば、BRは、「2パンチ」BR-TAPであれば「3パンチ」という計算になります。

  • 穴を開ける。
  • BR成形加工をする。
  • タップ加工を行う(BR-TAPの場合のみ)。

※パンチとは、タレパンが1回金型を押すことを表します。

タレパンを使わない加工。

加工方法の幅は広くなり少し比較が難しいのですが。

  • 穴をあける(ドリル・セットプレス)。
  • バーリング成形を行う(セットプレス)。
  • タップ加工を行う(タッピングマシン)。

比較しての最大の利点は、タレパンの場合「1台の加工機で終わらせる」ことができるということです。どんな加工機も必ず稼働前に「段取り時間」が必要です。段取りが1回のタレパンと段取りが3回のタレパンを使わない加工は比較にならないでしょう。
わたしの経験ですが、タレパンの金型費の消耗を考えても、加工費数十円のタレパンと1工程数十円のタレパンを使わない加工では数倍の差が出るでしょう。

段取り時間=材料をセットしたり・CNCのプログラムを呼び出したりする加工を始める前の準備時間の事です。

タレパンでのBR・BR-TAPの限界。

そもそも、BR・BR-TAP加工限界があることを覚えてください。

板厚。

これは、BR・BR-TAPに限らないのですが、板厚2.3㎜がタレパンでの加工限界です。そして、BR・BR-TAPについては、板厚が薄いほど高さが出せて、厚くなるほど高さが出しにくくなります。基本的な考え方として、板厚は、0.8㎜~2.3㎜までです。

タップのサイズ。

できる加工はM3~M6までです。特殊な金型をお持ちの工場もあるでしょうが、その金型は別のお客様の預かり物の可能性があり利用できる保証はありませんのでM3~M6で設計を行うことが無難だと思います。

BR・BR-TAPと板厚の関係。

組み合わせによりBR-TAPの「いらない板厚・できない板厚」も出てきます。板厚2.3㎜に対してM3タップは普通に加工できるので、BR-TAPにすると無駄です。更にもう一つ言わせていただくと、M3のBR-TAPの加工を行うための下穴が1.6㎜を越えると板厚よりも小さくなります。タレパンでは板厚より小さな穴は、加工しません。

M3M4M5M6
0.8㎜××
1.0㎜×
1.2㎜
1.6㎜
2.0㎜
2.3㎜
対象は軟鋼・アルミとします。
空白は不要。×は「できない」

図面での表記。

BR・BR-TAPは3Dのデータでも指示は出せますし、図面でも指示は出せるでしょう。

3Dデータでの注意。

基本的には、Stepなどでは形状確認しかできないので、「たぶん、M4のBR」かな…ぐらいしか伝わりません。なので、Stepなどの中間ファイルを利用する場合は、図面も作製することをお勧めします。ネイティブデータでの対応が可能な場合は大丈夫です、ですが、モデリングで注意してほしいのがBR・BR-TAPの形状が3Dデータの中で独立していることがあります。簡単に言うとBR・BR-TAPの部分が1つの部品としてどこにも繋がっていない状態の場合があります。これは、CAD内で部品を取り出した際に置いてきてしまいBR・BR-TAPと指摘が付かない場合がありますのでご注意ください。

図面での指示の場合。

図面で指示を出す場合必要な項目があります。

BRの場合。

  • 穴径。
  • 向き。
  • 高さ。

BR-TAPの場合。

  • Mサイズ。
  • 向き。
  • 高さ。

まとめ。

板金に直接加工のできるBR・BR-TAPは、タレパンの成形加工の中でもメジャーで指示も多い加工です。とは言っても加工できる板厚のルールがあったり、ネジのサイズがあったり中々面倒ではあります。ですが、コストを考えると魅力が高いのも事実です。ナットなどで止める方法も当然ありますが、部品点数が増えると管理項目も増えたりデメリットも増えてしまいます。「BR・BR-TAP」是非検討してみてください。