3D-CADで設計、2D図面て必要?時間の無駄にならないの?
よく相談されるのですが、「3D-CADで設計を行っているんだから、データ渡せば2Dの図面いらないんのではないですか?」と。2D図面は本当に必要・不要なのでしょうか、2D図面は、時間ばかり取られる無駄なものになってしまったのでしょうか。残念ながら答えは、2D図面は「特別な場合を除いて」あったほうが良いです。では、特別な場合とはどんな時でしょう。確実にあったほうが良い場合とはどんな時でしょう。また、2D図面を作ると大きなメリットが生まれます。見えないところが見えてくる。少しおぼろげな話ではありますがご案内していきます。
特別な条件でない限り2D図面は必須と考えるべき。
先ず、「特別な条件とは」と思われると思います。ここで言う特別な条件とは、長年お付き合いしている工場で、CADデータの受け渡しに対して綿密な情報共有が行われている。これがない場合、基本2D図面は作っておいて損はないでしょう。
あなたは、製造工場へどのようなイメージでCADデータを渡すお考えですか?3Dデータの中間ファイル(Step・IGES)に公差は引き継がれません。ネイティブデータ(そのCAD特有の保存フォーマット)を渡すお約束はできていますか?中間ファイルより何倍も多いデータ量になるため、メールの添付は難しいく、今はクラウドなどでの受け渡しとなります。お約束はできていますか?
日々取引のある工場でもない限り、まだまだ3Dデータのみでの製造依頼は難しいのです。
勘違いはしないでくださいね、あなたが欲しい製品を手に入れるために必要な工程なのです。
設計に使うのはCAD、加工に使うのはCAM。
あなたが依頼先(製造工場)が決まっていない・たまにしか依頼しない、このような時は、依頼先があなたのネイティブデータを読み込める可能性は極めて稀でしょう。これはネイティブデータを読み込めない=公差指示が3Dデータできない、と言うことになり、モノづくりとしては致命傷です。なぜこのような事が起るかというと、設計を行う企業に必要なソフトはCADで、製造工場に必要なソフトがCAMだからです。
長い間、2D図面で加工を指示されてきた工場(製造)の世界と、便利に早く設計を行う世界とは別々の進化を遂げています。この現象が今のイライラさせられるモノづくりの現状です。
CAMを持っている工場は、多くあります。ですがCADを所持している工場は少ないでしょう。なぜなら、自社でオリジナルの製品を作ることが少ないからです。自社製品を作らない場合でCADを所持している工場は、事前に普段お付き合いのある会社と綿密な情報共有を行い導入している可能性があります。そういった工場は少ないでしょう。
3D-CADデータで製造依頼を行うなら、事前に工場との打ち合わせを行い同種のCADを用意して行う必要があります。
製造側のデメリットは、設計側のメリット 逆もあり。
当然ですが、2D図面の作成には時間がかかります。時間=コストは可能な限り抑えたいところですが、出来上がりの製品の事を考えると2D図面はあったほうが良いのはご理解いただけたのではと思います。ここは実際のトラブルの例を挙げていきます。
実際のトラブル。
こちらの事例に関しては、経験上1回や2回ではないものだけをお話ししていきます。
工場で2D図面を作る場合。
コストは工場にかかります。その分の請求に対して支払いは当然発生するのですが、問題は納期です。製造時間+2D図面の作成時間となりますので、納期に余裕がある時でもないと、工場での2D図面の作成は、納期を圧迫する可能性があります。
3Dデータ+製造依頼書での依頼。
公差はすべて一般交差で都の指示のもと、「3Dデータ+製造依頼書」のみでの製造依頼をお受けしました。製造依頼書の中には、材質・板厚・表面処理・・・など図面枠に記載されるデータの記載があり製造を行うこととなりましたが・・・「製造依頼書」の一覧がズレていて、つじつまの合わない製品が生まれてきて確認のため膨大な時間を費やすことになりました。
特殊すぎる3D-CADの利用で残念な結果。
今はネットで多数の企業が、金属加工の注文をできますが。そこで「お断りされた」との事でご相談いただいたのですが…。3D-CADが特殊でエクスポートできるのは、ネイティブデータのみ。中間ファイルを出力するのはオプションで有料だから出来ない。もちろん、2D図面作成も、そのCADでは有料オプション。結局、書き直しとなりました。
工場側の考え方。
悲しい話ではありますが、まだまだ製造工場は紙優先です。2D図面は、必須アイテムと考えるところがほとんどでしょう。その理由は、図面 ⇒ CAMデータ作成、この工程が加工機を動かすための必須条件だからです。3Dデータを頂いた場合、3Dデータ ⇒ CAMデータ、文字にすると同じような工程に見えるかもしれませんが、CAMデータの中に公差の指示があり、その公差が図面に記載されていない場合、ネイティブデータを頂き更には、そのデータが読み込める3D-CADを用意する必要があります。
ようは、同じCADを持っていないと公差は、別途(図面などで)指示を頂かないと加工ができないとなります。
例えば、その工場の売り上げの80%以上を締める企業への対応であれば考える可能性もあるでしょうが、そうでない場合は難しいと結論付ける可能性もあるでしょう。
設計側の考え方。
タイトルの通り3Dデータがあるのだから2D図面は不要だろう。考え方の一つはありだと思います。ですが、それでは時代に合ったものを作ることは難しいかもしれません。進化をしていても、まだまだ連携が取れていないのが現状ということを理解しているとスムーズに事は運ぶのかもしれません。
これは、設計者が製造依頼に携わるのが条件の話で、状況によっては調達の部署や商社が中間に入ると変なしわ寄せが工場に負担をかけます。伝言ゲームの発生で納期がひっ迫するからです。
2D図面はスキルアップの目的で。
3Dデータの進化は、まだ独自路線を走っているように感じています。3D-CADのデータ量が小さくなるとか、表示が速いとか、データの精度が高いとかは製造時関係のない話です。電気自動車のパーツが20.000点あろうがCAMデータは1つ1つ作業するのです。なので、まだまだ歩み寄ろうとしているようにはとても見えないです。今後も2D図面を作る作業はまだまだ続くでしょう。2D図面がないとモノづくりができないとは言いません。面倒な部分を工場がフォローしている可能性があることをご理解ください。
2D図面作成の設計者のメリット。
2D設計のできる人は、3DCADを覚えるのは簡単。3DCADしか出来ない人は2Dでの設計は難しい。「2Dでの設計の必要がない」ともよく言われますが、判断の速さと、アイデアの豊富さは桁違いです。画面がないと打ち合わせができない人も多いようです。紙とペン、ホワイトボードがあれば対応可能な設計者は、どんどん減ってきているように感じています。小学生のころに習った立方体の展開図何種あったか覚えていますか?覚えていなくても頭で考えだせる。これが発想の柔軟さではないでしょうか?
まとめ。
まだまだ現代は、3Dデータだけでモノづくりを行うのは少し怪しい所があります。作業者のレベルアップのためにも2D図は、基本作る方向で考えていただけると幸いです。紙と鉛筆でモノづくりのできる技術者になるために。
モノづくりは面白い、今後も業界の裏話的なお話しできればと思います。2035年問題もありますし、金属3Dプリンター、3D-CADの今後の動向も気になるところです。
立方体の展開図は11種だったと思います。