製造業の闇、取り残される加工費
どんな業界でも、その業界のルールがあります。当然良いこともあれば、良くないことも…製造業がの問題点。「加工費」加工費自身が悪さをしているわけではないです。悪さをしているのは、業界のルールです。私は、著名なアナリストではないです。なので実体験からの予測しかお話しできないですが、何かのヒントになればとも思っています。今回の題材は、大手メーカとのお付き合いの中で、量産品の「加工費」問題です。
今回の条件
- 大手製造メーカーと直接取引をしている。
- 量産品がある。
- 取引の年数が長い。
- 10年以上作り続けている製品がある。
問題と感じるところ。
長いお付き合いの中で、価格の変わらない製品を長年製造している。
大手との直接取引の場合、「材料費」については比較的簡単に価格変更が可能です。私の知る限りですと、専用の資料に必要事項の書き込み+価格変更のエビデンス(鋼材メーカーの見積りなど)を添付すれば受け入れられることが多いです。
問題は、製品の加工費です。加工費の中には、原材料費以外のものが入っています。この加工費が問題なんです。加工費の価格更新(変更)は非常に難しい。
加工費が更新できないと何が問題。
先ず加工費は、直接労務費+直接経費+製造間接費=加工費ですから、加工費が変更されないと時間が止まってしまっています。製造業の人件費が上がらない理由の一つだと私は思っています。
長きにわたる負の遺産。
受注した時は問題ないんです、その時はその時代の価格で受注するわけだから負の遺産どころか大切な仕事です。ですが、その製品が5年・10年と製造していくうちに価格更新を行わないと段々と重くのしかかってくるのです。本来であれば人件費は若干であろうと上げていきたいです。ですが、製造している製品の利益は変更されないどころか減っていく可能性があります。加工機は消耗するし年々メンテナンス費用も高くなります。他にも光熱費、設備(PCやコピー機)と今までと同じ利益では経営が立ち行かなくなるのも当然です。もちろん、生産終了していく製品もあれば、新規で生産を開始する製品もあるでしょう。そんな中で上手くバランスを取って経営をして従業員を守る。経営陣は本当によくやっています。
メーカーのモノづくり。
メーカーも5年・10年と同じ製品を闇雲に作り続ける指示をしているわけではないです。5年・10年と使い続けられる設計があっての製造依頼です。そしてその年の新製品に見組み込む設計を考えます。あたりまえですが、その部品の設計費用が安くなるからです。実績のある部品で新商品を考える。これは普通の事なんです。
派生製品の見積りが同じ計算式。
工程が同じでサイズの違う製品、これを派生部品とした場合。見積りの計算式は昔の計算式が使われることが多いです。サイズが違うということですので材料費は、新価格なのですが、加工費が着いてこない見積提出を求められることがあります。
あるAという部品があったとします。L字の金具で一部寸法が10㎜伸びたとします。高さでも、幅でも、奥行きでもどこでもいいのですが、大きくなる分の材料費は高額になりますが、加工費に変更はありません。この場合、加工費は5・10年前の加工費の計算で行わます。
5年に一回価格改定の見直しを。
本来は、5年に一回程度の価格見直しのルールがあれば、このゆがんだ現状からの脱出ができるのでしょう。または、見積りに期日があるように、見積条件として「生産が5年以上続く場合は、再見積もりをお願いする場合があります。」などの中期が必要なのでしょう。
メーカーからの救済。
メーカーは生産数が大幅に減少すると救済措置を出してくれる場合委があります。スケールメリット的な部分を排除し、再見積もりの提出を依頼される場合です。
生産数が月産50.000個から、月産5.000個の1/10になった場合などです。
まとめ。
今回の何十年と変わらない加工費の問題は、どこの製造業者でも抱えている問題ではないでしょうか。ただしこれは、最初に挙げた条件のように、「大手製造メーカーと直接取引をしている。」というのが条件になっています。ここに商社や調達部署などが介入してくると、もっと複雑で闇も深くなります。複雑な闇はいつかご案内するとして、今は「闇は闇として理解し」日々改革を進めていくのが正解なんでしょう。